日本離床学会 - 早期離床・看護・リハビリテーション

Q&A Vol.541 【離床時の転倒に注意すべき障害とは】高次脳機能障害に関するQ&A

質問

高次脳機能障害の患者さんで、離床時の転倒に注意すべき症状には何がありますか?

回答

回答者:曷川 元、他 日本離床学会 講師陣

離床には転倒に影響する「注意障害」や「半側空間無視」をマークすべきです。離床時の転倒は、注意すべき有害事象の一つです。

高次脳機能障害と転倒リスクを調査したいくつかの研究では、転倒者の多くは注意障害(文献1)や半側空間無視(文献2-3)・病態失認(文献4)を呈していたと報告しています。

これらの高次脳機能障害は、障害に対する本人の認識が薄いために、動作能力の過信から転倒につながるケースが多くあります。動作能力と本人の認識の乖離を評価するものとして、転倒予防自己効力感尺度(Fall Efficacy Scale : FES)があります。

FESは10 項目を各1点から4点で採点し、点数が高いほど、動作が自立して安定して行えると、本人が認識しているという判定になり、転倒恐怖感に影響するカットオフ値は41点(文献5)といわれています。本人の判定と、実際の動作能力の乖離が大きいほど、転倒リスクは高くなるので、患者さん本人が動けると思っている動作と、実際の動作能力を評価し、乖離がある場合は注意して介助や見守りをするなど、対策を講じましょう。

文献

  1. 高嶺一雄.脳血管障害患者における転倒・転落の危険因子:特に高次能機能障害との関連性についてKitakanto Med J 2005;55:1-4.
  2. 市原多香子,他.脳神経疾患の転倒・転落 文献から見た要因の検討. BRAIN NURSING 2007 vol.23 no.7.
  3. 伊藤秀樹,他. 脳梗塞急性期例の転倒 Journal ofclinical Rehabilitation Vol.6 No.3 1997.3.
  4. ME Tinetti,et al.Falls effi cacy as a measure of fear of falling.JGerontol. 1990 Nov;45(6):239-243.
  5. 大谷 知浩 他. 整形外科疾患入院患者の歩行獲得早期におけるFalls Efficacy Scale-International(FES-I)の信頼性および転倒恐怖感予測精度に関する検討.理学療法科学 36(4):587–593, 2021.