日本離床学会 - 早期離床・看護・リハビリテーション

Q&A Vol.493 【ターゲットレンジという考え方】酸素療法に関するQ&A

質問

必要以上の酸素投与はCO2ナルコーシスのリスクがあるということですが、必要以上に投与しないためにはどうすればいいですか?

回答

回答者:曷川 元、他 日本離床学会 講師陣

臨床では「酸素は足りないよりも多いほうが安心」という気持ちが働き、必要以上の高濃度酸素を投与してしまいがちです。しかし、高濃度酸素を投与すると、酸素中毒やCO2ナルコーシスのリスクとなるため注意が必要です。酸素中毒は、高濃度酸素によって肺に活性酸素が多く発生し、肺の細胞障害から呼吸困難を起こします。また、CO2ナルコーシスは、過剰な酸素投与によって急激に二酸化炭素が体内に増加し、意識障害を起こすものです。

酸素中毒やCO2ナルコーシスを回避するためには、必要最低限の酸素流量を提供する必要がありますが、酸素流量が足りずに低酸素血症を起こしては元も子もありません。そこで、SpO2の「ターゲットレンジ」という考え方があります。

ターゲットレンジとは、目標範囲のことで、基本的にはSpO292% から96% で、慢性呼吸不全など二酸化炭素が蓄積しやすい患者さんでは、88%から92%を目標範囲に設定するというものです。デバイス別にわかりやすいアルゴリズムを施設に準備して、安全な酸素投与を検討しましょう。