日本離床学会 - 早期離床・看護・リハビリテーション

Q&A Vol.43 心室頻拍(VT)とスローVTの違い

質問

以前スローVTと聞いたことがありますが、 心室頻拍と何か違うのでしょうか?

回答

回答者:曷川 元、他 日本離床研究会 講師陣

結論から言うと心室頻拍とスローVTは、病態やリスクが違います。心室頻拍(VT)は心室性期外収縮が3回以上連続して発生し、心拍数が100~250回/分となるものを指します。室内の異所性興奮が連続して発生し、心房からの血液供給がほとんど無い状態で、心室が空打ちする危険な不整脈の一つです。心電図波形は幅広く変形したQRS波が連続して出現し、R-R間隔は狭く頻拍を示します。この場合は心室細動(VF)と同様除細動が唯一の治療となるため、いち早く除細動やAEDを行う必要があります。

一方でSLOW VT(スローブイティー)は、心室頻拍に似た波形を示す(幅広く変形したQRS波が連続して出現)不整脈です。しかしこれは一時的に心室筋の固有調律が促進した状態で、危険性は少ない不整脈と言われています。原因は、心筋梗塞後の壊死した細胞周囲の興奮性が、高まった状態と考えられております。

しかし多くの場合は心室頻拍ほど早い脈にならず、心拍数は70~100拍/分程度です。VTという名前が重症なイメージを想起させますが、実は違う病態ということを理解しておくと、臨床で慌てなくて良いかもしれません。