質問
呼吸疾患で離床時に呼吸困難感がある症例に対して、オーバーテーブルなどで上肢の重さを取ると、呼吸困難感が楽になることを経験します。どのような機序でしょうか?
回答
回答者:曷川 元、他 日本離床研究会 講師陣
上肢の重さを取る効果は2つ考えられます。
1つは「大胸筋」です。
大胸筋は肩関節の内転などの作用がイメージされがちですが、呼吸筋でもあり、胸郭を広げて、息を吸い込みやすくする役割があります。しかし、慢性呼吸不全の方など、大胸筋の停止部(腋窩の前面)が硬くなっている方では、胸郭が十分広がらず、離床の負荷によって息切れが起こりやすいと考えられます。このときに上肢をオーバーテーブルに乗せるのはよい方法です。理由は、解剖学的に大胸筋は肩関節90度付近で、筋の緊張が緩みやすいことがわかっているため、胸郭が広がりやすくなる効果が期待です。
もう1つは上肢の重さです。
上肢は体重の約5%の重量があります。皆さんも両手に5kgの重りを持って深呼吸をしてみてください。恐らく息が吸いづらいと思います。実は呼吸状態が悪い方にとっては、上肢の重さは、胸郭が広がる動きを邪魔するため、苦しくなります。
これらの理由から、オーバーテーブルに上肢を挙げて離床するという方法は、呼吸困難感を軽減し、楽に離床を進めるために有用と考えることができます。
是非、臨床で使ってみてください。
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