日本離床学会 - 早期離床・看護・リハビリテーション

Q&A Vol.131 在宅酸素療法時の酸素投与のデバイスの考え方

質問

在宅酸素療法(HOT)を使用し吸気同調で6L/minを使用している方がいらっしゃいます。通常の酸素療法の場合、経鼻カニューレでは酸素流量は5L/minまでで、それ以上の場合は酸素マスクを使用するとのことですが、HOTの場合はどのように考えるべきでしょうか?
外出時や自宅内での使用に関してアドバイス頂けますでしょうか?

回答

回答者:曷川 元、他 日本離床研究会 講師陣

酸素療法を必要とする患者さんに対してデバイスを選択する際の留意点として、経鼻カニューレでは5L/minまでが上限で、それ以上は「鼻腔粘膜への負担がかかる」、「経鼻カニューレで5L以上投与してもFIO₂は大きくかわらない」という観点から簡易酸素マスクへの切り替えを検討します。

病院内で酸素療法を必要とし、連続流で酸素を使用している患者さんに対しては上記でよろしいかと考えます。

しかし、在宅酸素療法になると酸素投与流量、デバイスなど調整が必要になりますね。

ご質問にある、吸気同調とは、吸気時の陰圧を同調器が検知して、吸気時のみ酸素を送気してくれる機能です。主に外出時にボンベの使用量を節約してくれる働きがあります。

HOT用のボンベで最大のV2.8というサイズで6L/min使用した場合、同調器の種類や呼吸回数にもよりますが、3時間程度使用可能です。この場合6L/min使用なので酸素マスクに切り替えるか?と言うとそうではありません。同調器はあくまでも経鼻カニューレで吸気した時に使用できるモノです。

では、流量を6.0~7.0L/minに上げて吸入器酸素濃度に変化があるか?というと、とあるメーカーさんに問い合わせた際は、5.0L/minと大きく変わらないとの返答を頂きました。ただし私の臨床経験上、同調5.0L/minより6~7.0L/minと上げた方が酸素化が良くなる印象があります。

また、経鼻カニューレ使用にサージカルマスク(風邪・花粉予防の普通のマスク)を併用すると酸素化が若干良くなります。酸素流量を上げても酸素化が目標値まで達しない場合は、主治医と相談の上、検討しても良いかと考えます。

一方、自宅内でHOTを使用し、ご質問にあるような経鼻カニューレで6L/min以上の酸素を必要とする場合には経鼻カニューレや簡易酸素マスクではなく、オキシマイザーカニューレを選択することが多いかと思います。オキシマイザーは経鼻カニューレの鼻の部分に小さい袋状のリザーバーが付いています。このリザーブ機能により、経鼻カニューレの酸素投与量より少ない流量で同等のFIO₂を得ることが可能です。また、簡易酸素マスクとは異なり、口元はフリーなので食事や排痰も可能です。

入院時のみならず、在宅での酸素療法の必要性や、生活歴に関しても検討できると良いですね。