新コーナー「整形外科・運動器最新エビデンス」の最新情報をお届けします!このコーナーでは、運動器リハビリのエキスパートである海津先生が“これは面白い”という、整形外科・運動器にまつわるエビデンスを紹介。数値や統計の専門用語が出てきますが、このシリーズで、かみ砕いて解説してくれるので、少しずつ慣れていくように、是非、読んでみてください。
今回は「大殿筋強化の3種の神器」という内容を紹介します。
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スクワットの運動効果をアップして、大殿筋に効かせたいけれど、「フォームだけ意識していても、なんだか効いてる気がしない…」と感じることはありませんか?そんな時は、筋肉の活動性を賦活する、「アクティベーション・トレーニング」が有効かもしれません。
今回の研究では、大殿筋に注目し、3つのトレーニングを行うことで、普段の運動パフォーマンスをどこまで引き上げられるかを検証しました。この研究では、健康な12名(女性5名、男性7名)が参加し、1週間にわたり「アクティベーション・トレーニング」を実施しました。各参加者は、アクティベーション・トレーニングとして、1日2回、バンドを使った3種類の等尺性エクササイズを行いました。
- クラムシェル:側臥位で股関節を開閉(膝関節は屈曲90度程度)するトレーニング。
- サイド・ライイング・ヒップアブダクション:側臥位で脚(下肢伸展位)を横に持ち上げるトレーニング
- ファイヤーハイドラント:四つ這いで膝を90度に曲げたまま、片足を横に上げるトレーニング
トレーニングの前後で、参加者は両脚および片脚スクワットを行い、表面筋電図(EMG)で大殿筋の活動を測定しました。1週間後の測定結果として、トレーニングによって大殿筋の筋活動が、両脚スクワットで57%の増加、片脚スクワットで53%の増加と、大幅に向上したことが確認されました。
この結果で重要なのは、「フォーム調整をしないで」筋活動を高めることに成功したという点です。この研究の重要な示唆は、「材料湧水型」(造語です)アプローチの有効性です。すなわち、筋肉(材料)を準備することで、その後の運動の質を自ずと高めるという戦略です。例えば、スクワットを繰り返し練習する「課題指向型」アプローチとは異なり、筋力の土台を整えることで、自然に運動パフォーマンスが向上します。この2つのアプローチは片方だけが有効というわけではなく、両輪であると思われます。
「材料湧水型」で筋肉の活動を引き出した後、「課題指向型」のトレーニングに取り組むことで、より効果的な練習になることでしょう。動作練習前に材料である筋をトレーニングしておくことを、欠かさないようにしたいですね。
文献情報
Cannon, J., Weithman, B. A., & Powers, C. M. (2022). Activation training facilitates gluteus maximus recruitment during weight-bearing strengthening exercises. Journal of Electromyography and Kinesiology, 63, 102643.
https://doi.org/10.1016/j.jelekin.2022.102643
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3月20日(木・祝) 10:00~16:00 ※2週間見逃し受講期間有り
股関節OAに対するエッジの効いたリハアプローチ
講師:海津 陽一 先生
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