新コーナー「整形外科・運動器最新エビデンス」の最新情報をお届けします!このコーナーでは、運動器リハビリのエキスパートである海津先生が“これは面白い”という、整形外科・運動器にまつわるエビデンスを紹介。数値や統計の専門用語が出てきますが、このシリーズで、かみ砕いて解説してくれるので、少しずつ慣れていくように、是非、読んでみてください。
今回は「脊椎椎体骨折なのになぜお尻が痛い!?」という内容を紹介します。
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脊椎椎体骨折後に、胸椎や腰椎を骨折しているはずなのに、臀部や大腿近位部に疼痛を訴える患者さんに遭遇したことがあると思います。骨が折れているのは腰背部なのに、どうして臀部や大腿部が痛むのかと不思議に思いますよね。今回紹介する研究では、椎体骨折の箇所と痛みの場所の関係を調査し、その謎に切り込んでいます。
この研究では、急性骨粗鬆症性椎体骨折患者306名を対象に、痛みが主に骨折部位に集中している群と、骨折部位とは異なる箇所に痛みを感じる群に分け、痛みの位置と骨折部位の関連を調査しています。その結果、痛みの強さを表すスコア(visual analog scale:VAS)において、痛みが主に骨折部位に集中している群の方が、明らかに高いスコアだったということです。
結果の詳細を読み解くと、特に中央型や破裂型の骨折では、骨折した箇所そのものに強い痛みが生じやすい傾向がありました。一方、上部終板型や下部終板型の骨折では、骨折していない部位である、臀部や大腿近位部に関連痛が現れやすいことがわかりました。
この痛みの違いについて、椎体を直接支配する椎骨神経と、椎間板を支配する副神経の二種類の神経が、痛みの伝わり方に影響するという仮説があります。副神経は関連痛・放散痛を引き起こす可能性が高い神経であることが知られており、椎体終板は椎骨神経と副神経の両者によって支配されるため、椎体終板が損傷すると、臀部や大腿部など、離れた部位にも痛みが伝わるのかもしれません。臨床上の興味深い現象の、一端に光明を与えてくれる一論文です。
痛みの評価を症状だけで行うのではなく、画像評価などから、骨折のタイプも読み取ることで、離床方法やアプローチに活かすことができるのではないでしょうか。
■ 文献情報: Zhang, Haiping, et al. “Pain Location Is Associated with Fracture Type in Acute Osteoporotic Thoracolumbar Vertebral Fracture: A Prospective Observational Study.” Pain Medicine 23.2 (2022): 263-268.
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