人気コーナー「Dr中西の離床面白エビデンス」の最新情報をお届けします!
このコーナーでは、当会の医師部会の中西医師が“これは面白い”という、離床にまつわるエビデンスを紹介。
中西節でわかりやすく、楽しく、ユーモアを交えて教えてくれます。
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みなさんこんにちは。筋萎縮ゼロプロジェクトの中西です。
今回は「どうしたら咳が強くなる?」という内容を紹介します。咳をしっかりできるって重要ですよね。日本人の死因の3位は肺炎です。そしてその多くが高齢者の誤嚥性肺炎です。年齢を重ねると飲み込みが悪くなりますが、咳が弱くなって、誤嚥をした時に気管から外にだせなくなります。
この咳ってどうしたら強くなるのでしょうか。そのヒントを長崎大学のMorishita先生達が報告されました。呼吸に抵抗を加える吸気筋トレーニングの効果を検証した、無作為化比較試験の紹介です。対象となったのは65歳以上の高齢者で、フレイルまたはプレフレイルと診断された60人です。60人を26人の吸気筋トレーニング(IMT)グループと、26人の対照群に無作為に振り分けました。
IMTを8週間継続するとなんと、咳の強さは両群で有意差があり、吸気筋トレーニンググループで12%増加したのに対して対照群では1.8%低下しました。つまり、吸気筋トレーニングでフレイルの患者さんの咳嗽力が改善するという結果でした。吸気筋トレーニングすご!!
それではこのトレーニングをどのようにしたかみていきましょう。機器はスレショルド IMTというPhilipsの機器を使用したようです。
https://www.philips.co.jp/healthcare/product/HCHS730010/treshold-inspiratory-muscle-trainer
この機器を口で加えることで吸気に抵抗を加えて呼吸筋を鍛えることができます。患者さんは、毎日この機器を用いて吸気筋のトレーニングを実施します。最初は最大吸気抵抗の30%に設定したようです。この1セッションが30呼吸からなり1日24-56セッション、1日2回に分けて実施します。週1回は正しく実施できているかチェックが入ります。4週間後に最大吸気量を再評価して抵抗を調整したようです。
咳がしっかりできるようになるってすごいですね。フレイルやサルコペニアもPICSもそうですが、一度なったら終わりじゃないです!
咳の強さもまたしかりです。トレーニングで改善するということです!高齢になっても頑張れば健康を維持できる社会でありたいです。これからに希望を持てる研究ですね☆
Effect of Inspiratory Muscle Training on Cough Strength in Older People With Frailty: A Single-Blind Randomized Controlled Trial
https://www.archives-pmr.org/article/S0003-9993(24)01048-7/abstract