人気コーナー「Dr中西の離床面白エビデンス」の最新情報をお届けします!
このコーナーでは、当会の医師部会の中西医師が“これは面白い”という、離床にまつわるエビデンスを紹介。
中西節でわかりやすく、楽しく、ユーモアを交えて教えてくれます。
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みなさんこんにちは。筋萎縮ゼロプロジェクトの中西です。
今回は「エルゴメーターの大規模試験」という内容を紹介します。急性期の床上エルゴメーターってどうなんでしょうか。床上エルゴメーターというのはカタツムリではなくて、ベッド上でするサイクリングです。今までもさまざまな臨床試験がありましたが、数十人規模の臨床研究だったと思います。それが、なんと今回は360人を対象とした大規模な無作為化比較試験が報告されました。報告された雑誌はNEJM Evidenceという雑誌です。この雑誌はあのNew England Journal of Medicineという臨床系でトップの雑誌の姉妹紙です。2022年にできたばかりの雑誌なのでインパクトファクターまではありませんが、とてもすごい雑誌です。
カナダのKhoさんは、人工呼吸管理されている患者さんで、このエルゴメーターの効果を調べるために国際的な無作為化比較試験を実施しました。対象となったのは360人で、178人は通常のリハビリテーションに30分のエルゴメーター、182人は通常のリハビリテーションのみ実施しました。主要評価項目はICU退室3日後のPFITs(Physical Function ICU Test-scored)です。エルゴメーターはICU入室2日後に実施され、1日3セッションで合計27.2±6.6分の介入時間でした。通常のリハビリテーションは両群20-30分程度です。
結果は、残念ながら?エルゴメーターが身体機能を改善させるという結果にはなりませんでした。エルゴメーターではPFITsが7.7±1.7であったのに対して、対照群では7.5±1.7でした。なんでー?
こんなに頑張ってエルゴメーターをしたのに効果がないのはなぜか、介入が少なかったのか、対象患者の選定が不十分だったのか、アウトカムの設定に問題があったのか、エルゴメーターの効果的な臨床使用にむけた大きな一歩のように自分は感じました。カタツムリのように少しずつ少しずつ前に進んでいきましょう。
Early In-Bed Cycle Ergometry in Mechanically Ventilated Patients
https://evidence.nejm.org/doi/10.1056/EVIDoa2400137