人気コーナー「Dr中西の離床面白エビデンス」の最新情報をお届けします!
このコーナーでは、当会の医師部会の中西医師が“これは面白い”という、離床にまつわるエビデンスを紹介。
中西節でわかりやすく、楽しく、ユーモアを交えて教えてくれます。
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みなさんこんにちは。筋萎縮ゼロプロジェクトの中西です。
今回は「とろみ水の都市伝説!?」という内容を紹介します。
嚥下機能評価って皆さんどのようにしてますでしょうか。まずはとろみ水を飲ませてから、としている施設も多いと思います。しかし、このとろみ水ってどれくらい根拠があるのでしょうか。本当に飲み込みやすくて、患者さんの予後改善に役だっている??
そんな疑問に答える研究がJAMA Internal Medicineに報告されました。アメリカのMakhnevichさん達の報告です。高齢者を対象とした研究で、65歳以上の入院した認知機能障害のある患者を対象としました。
後方視的に、嚥下障害が疑われた患者さんで、75%のとろみ食か通常の食事かに分けられました。両群間の差はプロペンシティスコアが使用されたようです。主要評価項目としては死亡率、副次評価項目としては、誤嚥性肺炎などの呼吸不全、挿管、入院期間としたようです。8916人の患者が対象となりました。
とろみグループと通常グループで死亡率に差はなかったようですが、とろみグループの方が挿管された患者さんが少ないようでした。しかし、しかし、呼吸不全の合併症はとろみグループで多かったようです???
どういうこと??
実際にとろみを使った方が呼吸不全の合併が増えるのか、研究手法に問題があったのか、はっきりと分かりません。なので、この研究の結論は前向きな研究が必要だと結論づけております。んー、解釈の難しい研究ですね。
しかし、日常臨床の疑問から後方視的に調べてみて、次は前向きに調べてみようというのは、臨床家としても研究者としても非常に重要な姿勢だと思います。とろみ水自体が誤嚥を減らすことは、内視鏡や嚥下造影でも確認されていると思うので、とろみ水自体を否定するものではなさそうですが…
嚥下の世界はまだまだ分からないことが多いですね。
Thick Liquids and Clinical Outcomes in Hospitalized Patients With Alzheimer Disease and Related Dementias and Dysphagia
https://jamanetwork.com/journals/jamainternalmedicine/article-abstract/2818195