日本離床学会 - 早期離床・看護・リハビリテーション

【ROMは効果がない!?】Dr中西の離床面白エビデンス

人気コーナー「Dr中西の離床面白エビデンス」の最新情報をお届けします!
このコーナーでは、当会の医師部会の中西医師が“これは面白い”という、離床にまつわるエビデンスを紹介。
中西節でわかりやすく、楽しく、ユーモアを交えて教えてくれます。

*********************************

みなさんこんにちは。筋萎縮ゼロプロジェクトの中西です。

今回は「ROMは効果がない!?」を紹介します。皆さん、ROMは実施していますでしょうか?はい、あのROMです。Range Of Motionのアール・オー・エムです。今回はなんのギャグも思いつきませんでした(汗)

ROMとは、他動的な関節可動域訓練ですね。急性期や意識障害のある患者さんでは、積極的な離床ができないこともありますが、そんな時に最もシンプルな介入がROMになります。ベッドサイドで看護師さんが、実施することも多いかと思います。しかし、これは何のためにしているのでしょうか?

う~ん….

なんと、オーストラリアのスティラーさん達は、このROMが関節の拘縮予防に有効か無作為化比較試験を行いました。対象となったのは2日以上の人工呼吸管理、5日以上のICU滞在が予想される患者さんの体半分です。体の半分Σ(゚ω゚ノ)

この研究では、体の半分の足首、手首にROMを1日2回、最大4週間行いました。そしてもう半分の体はROMを受けませんでした。25人の患者さんが対象となりました。無作為化比較試験の結果、ROMを受けた側の足首や手首の伸展など、ROMを受けなかった側と変わりありませんでした。関節の拘縮や疼痛などにも差はなかったようです。

なんと、意外にも差がなかったという結果になりました。だからといって、明日から「ROMをやめよう」とはなりません。ICUでROMをすることで筋力が改善したという報告などもあります。第1回、Dr中西の離床面白エビデンスで御紹介した研究です。

A randomized controlled clinical trial of the effects of range of motion exercises and massage on muscle strength in critically ill patients
https://bmcsportsscimedrehabil.biomedcentral.com/articles/10.1186/s13102-022-00489-z

今回はROMに関して否定的な結果がでましたが、体の半分のみROMを受けるという研究方法は正しかったか?対象となった患者さんはどれくらいのリハビリを受けていたのか?ROMの頻度は適切であったか?などなど、僕たちはこの結果から正しく解釈して、明日の臨床につなげていく必要があります!

是非、皆さんの施設でもこの研究結果を議論してみて下さい!

Passive Movements Do not Appear to Prevent or Reduce Joint Stiffness in Medium to Long-Stay ICU Patients: A Randomized, Controlled, Within-Participant Trial
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38046936/

〇中西先生による新講座の開催が決定!
Dr中西の呼吸・循環アセスメントレベルアップ塾~パラメータ・フィジカルの“組み合わせ”から考える離床・治療戦略~
※2回まとめて申込みで2000円クーポンプレゼント
https://www.rishou.org/seminar/theory/x81-2024#/