日本離床学会 - 早期離床・看護・リハビリテーション

【希望を研究できるの!?】Dr中西の離床面白エビデンス

人気コーナー「Dr中西の離床面白エビデンス」の最新情報をお届けします!
このコーナーでは、当会の医師部会の中西医師が“これは面白い”という、離床にまつわるエビデンスを紹介。
中西節でわかりやすく、楽しく、ユーモアを交えて教えてくれます。

*********************************

みなさんこんにちは。筋萎縮ゼロプロジェクトの中西です。

今回は「希望を持つ」を紹介します。

離床面白エビデンスの論文探しにいろんな雑誌の論文をみているのですが、“Hope at a crossroads: Experiences of hope in intensive care patients”というタイトルの論文をみつけました。だいたいこういうタイトルの論文は総説やコメント系が多いのですが、今回は希望をテーマにした研究論文であったので興味深く読んでみました。

ところで、皆さん希望はありますでしょうか。ほとんどの人が仕事、お金、家庭、人間関係など、様々な不安をかかえながら生活していると思います。特にICUの患者さんは、これから生きて退院できるのか、回復はどうなるのか、仕事に復帰できるのかなど希望を持つのが難しい環境にあります。しかしそのような経験は、実際に患者さんになってみないと分からないかと思います。

そこでノルウェーのBerntzenさん達は、ICUを生きて退室した患者さんに、希望に関してアンケート調査を行いました。13人の患者さんが対象となり、平均年齢は62歳、ICU滞在日数は4-47日だったようです。それぞれのインタビューの長さが17-49分ということで、しっかりとしたインタビューですね。

記述的な結果が記載されてます。やはり先行きが分からないため、希望がもてないようです。生きるか死ぬか、元通りの生活に戻れるかどうか。さらにはどんな治療が行われているか分からない、日々よくなっているのか悪くなっているのかわからない、家族との関係を保てない、医師やスタッフと良好な関係が気づけないこと、なども希望が持てない原因になるようです。医療スタッフが他の患者さんについて話をすることや、雑談などが聞こえてくることなどもストレスになるようです。痛みや不安なども希望を持てなくなるようです。

今までの研究のように数字で表示されないので、少しかわった研究ではありますが、患者さんがどのようにすれば希望を少しでも持てるのか、参考になる内容ですね。もちろん予後が難しい患者さんもいますが、この論文の内容を見る限りは私たち医療者にも、患者さんが希望を持つためにできることはありそうです。

患者さんが希望を持つことができれば、もっと離床も頑張れるはずです。希望がうまれるような医療を提供できるように明日からも頑張りましょう。

“Hope at a crossroads” – Experiences of hope in intensive care patients: A qualitative study
https://www.australiancriticalcare.com/article/S1036-7314(23)00129-7/fulltext