日本離床学会 - 早期離床・看護・リハビリテーション

Q&A Vol.607 【予後不良症例の訴えを読む力】スピリチュアルペインへの対応

質問

予後不良が告知されている患者さんが、毎日スタッフのクレームを言っていて、すぐに改善が難しい要求ばかりしています。どうすればいいでしょうか。

回答

スピリチュアルペインと捉えて、できるケアから行いましょう。スピリチュアルペインとは、不安や抑うつとは異なり、人生の意味や自己の存在理由についての苦悩と捉えられる場合が多く、確立されたものはありません。日本の臨床においては「自己の存在と意味の消滅から生じる苦痛」(文献1)が、定義としてよく用いられます。患者さんが、深い苦悩や孤独感などのスピリチュアルペインを抱えていることを理解しながら、少しでも心地よい日常を整えるように向き合う姿勢が必要です。

スピリチュアルペインを理解してケアに取り組むことを、スピリチュアルケアといいます。スピリチュアルケアの基本は徹底的に受け身の姿勢をとることです。クレームや無茶な要求の裏にある苦悩や孤独感は何かを考えながら、「○○が気になったのですね」など、相手の気持ちを受け止める姿勢で接することが大切です。

しかし、時には「受け身の踏み込み」も必要になります。ご質問のケースの場合「スタッフの○○が改善されたらどのような気持ちになりますか?」「○○になったらどうしたいですか?」と聞くなどの踏み込みんだケアは、患者さん自身が自分のペインに向き合い、解決するためのきっかけになる「ワーク」となります。

何か特別のことをしなければいけないと思う必要はありません。特にケアを始めたばかりのころは背伸びをせず、自分の気持ちに素直になることが大切です。相手を大事に思う自然な気持ちで接し、患者さんの苦悩から自分は成長させてもらっている、という気持ちで関わっていくのが、スピリチュアルケアの第一歩になると考えます。

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